2013年。アメリカ。"TO DO LIST". ブランディの友人役のアリア・ショウカットが『マジックマネー』に引き続いて素晴らしかった。
マギー・ケアリー監督・脚本。
1993年のアメリカ西海岸の地方都市を舞台に、高校を卒業して大学入学までの夏休みをアルバイトをしながら過ごす女性の悩みや苦しみを笑いに昇華したコメディ映画。
設定がクリステン・スチュワート出演の『アドベンチャーランドへようこそ』に似ている。年代は昨年公開された『ウォールフラワー』と重なっている。
1990年代回顧ブームの到来なのだろうか。そういう流れはとっくに到来しているのかも知れないが、この作品は女子高生版の『スーパーバッド 童貞ウォーズ』、あるいは『ウォールフラワー』と『アメリカン・パイ』をミックスした感じの作品でかなりきつめの下ネタだらけで描かれる青春哀歌となっていた。
下品すぎる下ネタの陰に隠れて目立たなくはなっているが、『ウォールフラワー』より作品の質は高くすぐれている、ような気がする。『アドベンチャーランドへようこそ』や『スーパーバッド』には残念ながら及ばない出来栄えだった。
1990年代のヒット曲が数多く流れる中で選曲のセンスがさえる場面がいくつかあった。
傷つきやすい童貞小僧のキャメロン(ジョニー・シモンズ)がヒロインのブランディ(オーブリー・プラザ)に誘導されるままに、ブランディの膣の場所を探し出そうとして下半身をまさぐるが、かなわずに苦しみもだえる場面にマジー・スター(Mazzy Star)の『フェイド・イントゥ・ユー(Fade Into You)』が流れ続けている。これには失笑を通り越して感動してしまった。これからはラジオであの曲が流れるのを聞いても必ずこの作品の下品極まりないシーンを思い出して泣き笑いすることだろう。
IMDB
公式サイト(USA)
1993年夏、卒業生総代として卒業式での華やかな舞台をやりとげたブランディ(オーブリー・プラザ)だったが、裁判所判事の父親のもとで育った優等生のブランディには、ボーイフレンドがいたことがなく、当然セックス経験もないことが劣等感になっていた。このままバージンのままで大学生になるなんてあり得ない、と思ったブランディは「セックスする前にしなければならない10以上のこと」をリストにしてひとつひとつ実行していく。
オーブリー・プラザは29歳で高校生役しかも下ネタを含めた捨て身の演技で尊敬に値する。日本の女性お笑い芸人にも見習ってもらいたい捨て身だった。
『スーパーバッド』のマクラヴィン、というより『キック・アス』のレッド・ミストとしての方が有名になってしまったクリストファー・ミンツ=プラッセもゲスト出演程度の短い時間だったが登場してオーブリー・プラザとの下ネタバトルを繰り広げる。
共演した俳優やスタッフから愛される俳優、クリストファー・ミンツ・プラッセには、ジェームス・ディーンの親友だったサル・ミネオを連想させる面影と好ましさがあり、善人は長生きしないということわざ通りに若くして亡くなったサル・ミネオみたいにならないといいが、と要らぬ心配をしてしまうほどに誰からも好かれる好人物らしい。
ブランディの最終目的はイケメンで適度にマッチョでギターで自作の歌を歌えるラスティ・ウォーターズ(スコット・ポーター)とのセックスだった。HAND JOBや、BLOW JOBなどの試練を乗り越えてブランディは果たしてラスティとのセックスという頂にたどり着けるのか。
最後にブランディがキャメロンやラスティの前で、セックスに混乱させられた自分たちの青春について辛辣な意見を述べる場面がみょうに説得力があって感動的でもあった。
もっとも笑えた場面はビル・ヘイダーがブランディの姉のアンバー(レイチェル・ビルソン)とセックスしている部屋へ父親役のクラーク・グレッグが入ってきて口論になるシーンで、あまりのひどさと下品さにあきれ果てた。
『セレステ&ジェシー』のアンディ・サムバーグが流れ者のバンドマン役で登場してブランディのBLOW JOBの相手になる場面にも哀しいユーモアがあった。
この作品は物語と同じく1993年に地方の高校を卒業したマギー・ケリー監督の青春そのものを素材にしたドラマだという。
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