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Channel: 映画の感想文日記
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★ 『ワン・デイ 23年のラブストーリー』

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2011年。アメリカ。"ONE DAY".
  ロネ・シェルフィグ監督。デヴィッド・ニコルズ原作・脚本。
 1988年から2011年までの23年間のある男女の関係の変化を描いた物語。
 23年間のエピソードは毎年7月15日という特別な日に限定されて物語られるので、案外テンポが良く、23個の短いエピソードを組み合わせて作られた物語、という点がこの映画のもっともすぐれたところだったかもしれない。何となく、連続23回の短い連続メロドラマをまとめて一気に見たような感じもする。

 監督は『幸せになるためのイタリア語講座』で世界的な脚光を浴びたデンマーク出身の演出家だったが、『幸せになるためのイタリア語講座』でも垣間見られた、良く言えばスウィート、ひとことで甘々の型にはまったベタな情景描写がやや興ざめなところもあった。
 しかし、これは物語の鍵を握る重要な役をアン・ハサウェイが演じているせいのような気もする。
 アン・ハサウェイが演じる役柄は、ロベール・アンリコ監督の『冒険者たち』(1967年)におけるジョアンナ・シムカスのような存在で、
 後半はある出来事が契機になって、主役のジム・スタージェスはアン・ハサウェイ演じるエマの面影を追い求めて追憶の日々を過ごすのだから、アン・ハサウェイは『冒険者たち』におけるジョアンナ・シムカス演じるレティシアのように、男たちが追い求め続けても決して手に入らない、大いなるあこがれのような存在に同化しなければ、物語が盛り上がらない。
 それにしてはアン・ハサウェイは超売れっ子のスター俳優でありすぎる。今年に限っても、もうすぐ、『ダークナイト・ライジング』や、『レ・ミゼラブル』などの大作が控えているし、この映画は決定的な一本ではあり得ない、というところが物足りなさをより強めてしまったような気もする。

 ただし、見方を変えれば、恋愛映画の近年の決定版と化した『ブルー・バレンタイン』の身もふたもなさに対する、この製作スタッフなりの誠実なアンサーソングのようなものとして受け止めることも可能な気がする。

 感触としては、ヒラリー・スワンクとジェラルド・バトラーとの『P.S. アイラヴユー』(2008年)にちょっと似たところがあった。韓国映画の『永遠の片想い』(2004年)を連想させるところもあった。
 『永遠の片想い』には非常な感銘を受けたので、見直してみるのがおそろしいような気がする。見直すと、「なんだ!この程度の映画だったのか。」とがっかりする可能性が高い。
 全体の印象としては、『いつか眠りにつく前に』(2008年)をこじんまりとさせたような印象がある。
 硬質な恋愛映画愛好家にはいまいちな作品だが、スウィーツ好きな韓流映画愛好家には最高の映画かもしれない。音楽担当のレイチェル・ポートマンがエモーションを否が応でも盛り上げて高みへとのぼらせる。
      IMDb             公式サイト(日本)
映画の感想文日記-oneday01
 地味な学校教師になり切ったアン・ハサウェイは熱演ではあったのだったが。
 23年という長い年月にもかかわらず、アン・ハサウェイは最初から最後まで一向に老けないで、美しいままだが、そんなことを気にする類の映画ではないので、1980年代から2010年代までのアン・ハサウェイによる衣装の時代ごとの着せ替え映画としても楽しむことができる。
 しかし、この映画の最高殊勲選手賞はジム・スタージェスで決まりだろう。
 ちゃんとのんきなボンボン学生っぽいたたずまいから、年輪を重ねて、苦しみや悲しみに押しひしがれたり何とか乗り越えたりしてきた中年男までをリアルに演じて見せて作品の質を高めていた。
 主題歌はエルヴィス・コステロ。ずいぶんソフィスケイテッドされ過ぎてしまったなあ、という感慨があった。

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