2011年。アメリカ。"DETENTION".
ジョセフ・カーン監督・脚本。
AKB48の『ギンガムチェック』のプロモーションビデオを見て、このディレクターは何者だろうと思ったジョセフ・カーン監督、アメリカMTV界の巨匠らしい。
バカ映画という呼び方がある。どうしようもなくだめな映画だが、見方によってはかわいらしくもあり、駄作だと捨て去ってしまうにはキュート過ぎる作品をそう呼ぶようだ。定義づけされている概念ではないので人によって基準が異なるため、「あれはバカ映画ではない、単なる駄作だよ。」ということもある。
最近だとテイラー・キッチュ主演の『バトルシップ』は、比較的誰でもが認めるバカ映画の秀作だった。
「バカ映画」という楽しみ方は日本固有のものではないのか、と思っていたら、
これは全世界共通のものだった、と知らしめるさえたせりふがこの『ブラッディ・スクール』の中にあった。
映画館で『シンデヘラ2』という『スクリーム』シリーズと『SAW』シリーズを足したようなつまらないスラッシャー映画を見ている高校生たちが、「すごい!これは『ボルケーノ』以来の歴史的傑作だわ!」と叫ぶシーンがある。そうか、『ボルケーノ』はアメリカ人もそういう楽しみ方をしている映画だったのか、
と知って安心するとともに、見ず知らずの異国の他人と無言の友情で結ばれたかのような宏大なる共生感を感じたものだった。
しかし、『ボルケーノ』も『バトルシップ』も、この『ブラッディ・スクール』と比べれば、はるかに教養人の映画だった。いくら何でもバカすぎる。しかも、オープニングから『スコット・ピルグリム VS 邪悪な元カレ軍団』みたいにゴチャゴチャしたおしゃれ映画のふりをしているだけに始末に負えない。
何かとっかかりを見いだせない人にはつらいだけの映画となるだろう。
この映画が楽しかったのには、1990年代のポップ文化が嵐のように並びたてられて、登場人物は2011年の高校生なのに、なぜか全員が1990年前後のポップの流行にとりつかれているところにあった。
主人公の女の子が何の脈略もなく、「ミート・イズ・マーダー」と叫んだり(ザ・スミスのヒットアルバムのタイトル)、パトリック・スウェイジにあこがれた少年が『ロードハウス 孤独の街』や『ダーティー・ダンシング』のDVDを真剣に見ていたりする理解不可能な世界の中で学園コメディが進行する。
『スクリーム』シリーズのパロディみたいに始まった物語は、徐々にたがが外れて暴走気味になり、犯人探しの学園ミステリーからタイムスリップSFに飛躍して、いなかの高校で未来を見出せない負け犬男子女子のためのメッセージ、「ひとりひとりが王子様でお姫様。」という感傷的なせりふで幕を閉じる。
IMDb
1980年代の『すてきな片想い』、『ブレックファスト・クラブ』、『フェリスはある朝突然に』、『ときめきサイエンス』、『プリティ・イン・ピンク 恋人たちの街角』などにあこがれたジョン・ヒューズ学校の劣等生が、学園ホラー・コメディを装ったMTV風の失敗作。
超売れっ子俳優になったジョシュ・ハッチャーソンや、シャンリー・キャズウェル、スペンサー・ロックなど主役級の登場人物が良かった。
出来は良くないし、評価も高くはないが、作りのかわいさが捨てがたい魅力となっている。
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