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★ 『バイオハザードⅤ:リトリビューション』

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2012年。アメリカ。"RESIDENT EVIL : RETRIBUTION".
  ポール・W・S・アンダーソン監督・脚本。
 シリーズの第5作目だったが、過去の4作品の物語の記憶がまったくない、アクション場面の断片的な記憶しかない、
 しかし、それこそが『バイオハザード』シリーズの持ち味であり、わざわざ見に行くことの動機づけになっている。
 これはすがすがしい、テレビゲーム原作映画のあるべき姿にちがいない。

 第3作目あたりから顕著になった主演のミラ・ジョヴォビッチの年齢からくるおかあさんっぽさ、おばちゃんぽさは第5作目で見過ごせないレベルにまで到達した。
 研究所内の無機的な空間の中でほぼ素っ裸の状態で演技するミラ・ジョヴォビッチは、前衛演劇の舞台を見ているような不思議な感覚に観客を誘う。
 
 テンポのよさはこれまでで最高のように見えた。退屈させないための工夫は涙ぐましいほどにあちこちに見られるが、それをただばくぜんと眺めているだけの観客にさとられてしまうほどに見え透いているともいえる。
 ついでに場面ごとの予算のかけかたも透けて見えてしまうような気がする点は面白かった。6,500万ドルという予算の映画は普通なら資金の配分など見当もつかないが、この作品は全体に手際の悪さが目立つせいか、このシーンはこのくらいの労力で作られていそうに見える、などと想像しながら見ると楽しい。

 要するに相変わらずのくだらないゴミのような映画だったのだが、そんな映画をなぜわざわざ見に行くのか、その選択の意味はストレスを全く感じないひまつぶしの時間を得られることにあるのかもしれない。
 元のテレビゲームで楽しませてもらったせいで、惰性のように見に行った、というのが正確なようだ。

 いまどきこれほどに何もない映画は珍しいほどで、この空っぽさはすごいように見えないこともない。
 意図的なものかどうかは不明ながら、ストーリーは元のテレビゲームから一歩も飛躍せず、からっぽの物語で、登場人物全員が感情移入を拒否するように何もない、殺されようが生き延びようがどうでもいい人物ばかりしか出てこない。
 そもそも登場人物のひとりひとりが歴史を持つ人間であるかどうかもはっきりしていない。
 思い出のプログラムを入力されただけのレプリカントの可能性は否定できない、というほのめかしも所々にはさみ込まれており、『トータル・リコール』や『ブレードランナー』に連なるような不安の要素もスパイス程度にはあった。

 くだらない映画でも退屈することなく楽しい時間が過ごせたのなら何も文句はない。これまでで一番退屈しなかったこの作品はシリーズの最高傑作となるかもしれない。
 各場面に注がれた労力の大きさに感銘も受けた。
 名前のせいで映画ファンからはさんざんバカにされてきたポール・W・S・アンダーソンだったが、このシリーズ5作目には相当な気合も感じとれる。
 「ポール・トマス・アンダーソンのような力強さも、ウェス・アンダーソンのような才能も俺にはない、しかし、数あるアンダーソンのなかで最もイケメンなのは俺だし、最も金持ちなのも俺だ。俺は歴史に残らないアンダーソンだが、ミラ・ジョヴォヴィッチの夫だしビジネス上の成功者は俺なのだ。」という声にならない声が聞こえてくるような精いっぱいの努力の跡がうかがわれた。
        IMDb          公式サイト(日本)
映画の感想文日記-resident001
 ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるアリスが、コンピュータのプログラムなのか本物の記憶なのか定かでない過去の記憶による夢から目覚めるところから物語が始まる。アリスが人間なのかレプリカントなのかはあいまいにされている。
 オープニングのトリックじみた始まり方はつかみのハッタリとしては面白かった。W・Sも意外とやるな、と思わせたが、クライマックスで「やっぱりしょぼい。」と思わせてしまうところがW・Sらしい。
 中島美嘉が前作と同じアンデッドの役柄で登場する、すっぴんメイクだと中島美嘉は中島美嘉ではない、ということに気づいた。今回は多少派手なシーンも加わった。

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