2011年。内藤組/SPOTTED PRODUCTIONS. "LET'S MAKE THE TEACHER HAVE A MISCARRIAGE CLUB".
内藤瑛亮監督・脚本・製作。
ちょっと話題になった映画だった。公開規模が小さく、反応は目立ちにくかったようだ。
タナダユキを、よりロベール・ブレッソン寄りにしたような印象がある。
出演している女生徒役の少女たちは、ロベール・ブレッソン監督の映画から脱け出してきたかのように素晴らしい。
特に主役格の少女、ミヅキを演じる小林香織という新人は、演技の訓練をまったく受けていない人ならではの、演技していない主役、という世にも珍しい存在感で圧倒的だった。
カメラが回されて、フィルムに映像が記録されたときに、何か奇跡的といっても良いような出来事が起こったような気がしてならない。
ミヅキは俳優でもない、単なる少女でもない、かといってミヅキという役柄になり切っているようにも見えない。何にも属していない。それではいったいこれは何か。
パッとしないアマチュア新人女優というには、いろいろ引っかかりがあり過ぎる。この女優は、奇妙な存在感を放っているのだった。
この『先生を流産させる会』という映画は、あまり映画を見たことのない人にとっては、ただのしょぼいアマチュアじみた下手くそな映画にしか見えないに違いない。
そういう危うさとともにあるし、そう思われても仕方のない側面もある。
しかし、インデペンデント映画とは、過大評価するためのメディアでもあり、過大評価の連鎖を引き起こして話のネタにすることほど楽しいこともめったにない。
過大評価の果てに、神々しいまでの来たるべき映画の姿がかいま見えることだってないとは言い切れない。
特にこの作品は、過大評価を待ち受けているかのような、すき間や、荒れた部分がたくさんあるので、すでに数多くの著名人による賛辞の言葉が寄せられてもいる。すべての賛辞の言葉は的確にこの映画のすばらしさを説明している。
妊娠した教師を、「気持ち悪い」といって流産させようとする少女たちの感情教育の物語。
社会派映画からも、教育映画からもわざと遠く離れることに成功している、強いていえば思春期もののホラー映画に近いが、そういうジャンル映画とも違い、オンリーワンのイメージがあるが、
青春映画の傑作のひとつだとはいえるような気がする。
公式サイト(日本)
モンスター・ペアレントが学校を支配する地方の私立女子中学校。
少女ミヅキ(小林香織)は、担任の教師、さわこ先生(宮田亜紀)が妊娠したことを知り、ショックを受けたようだった。
「さわこ先生はセックスしたんだよ、気持ち悪くない?」と言い出したミヅキの言葉に感応して、少女たちは、「気持ち悪さ」の元凶であるさわこ先生の妊娠を消去するために、『先生を流産させる会』を結成する。
サワコ先生役の宮田亜紀は、万田邦敏監督の『接吻』や、冨永昌敬監督の作品などに出演しているようだ。どこかで眼にした記憶がある。
この映画の中では唯一ともいって良いまともな俳優で、物語の展開をひとりで支えていた。
どこかに異人的な違和感がただようおそるべきアンファン・テリブル、ミヅキの存在によって、この映画は光と輝きを手にした。
クライマックスのサワコ先生とミズキとのアクション場面と対話がおもしろい。
「どうして気持ち悪いの?」
「知らん。」というせりふには思わず笑ってしまった。
- 先生を流産させる会 [Blu-ray]/キングレコード
- ¥5,040
- Amazon.co.jp