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Channel: 映画の感想文日記
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★ 『そして友よ、静かに死ね』

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2011年。フランス。"LES LYONNAIS".
  オリヴィエ・マルシャル監督・脚本。エドモン・ヴィダル原作。
 近年のフレンチ・ネオ・ノワールの活況はいくつかの傑作を産み出してきたが、日本に輸入されたものだけに限ってもけっこう当たりハズレがあるようだった。
 それほど熱心に見ていたわけでもないので正確なところはわからないが、フレンチ・ホラーも景気が良いし、映画産業自体が案外と元気なのかも知れない。
 この映画はノワールものの中では当たりの部類に入るだろう。
 一見すると、『ゴッドファーザー』的な物語を、深作欣二スタイルのアナーキーさで描いたような強い吸引力を持っていた。

 年老いたギャングが若かりし頃の事件を回想する形式のスタイルで、すぐに連想するのは、セルジオ・レオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』だったが、明らかにそれが下敷きにされてはいるようだ。
 冒頭のパーティーの場面は、あからさまに『ゴッドファーザー』だし、実在の事件を再現しつつ、時間がとびとびになる語り方は『グッドフェロウズ』を連想させもする。
 銃火器への細部のこだわりや、銃撃戦のド派手さはマイケル・マンっぽくも見える。1970年代あたりのマシンガンやライフル銃などは、使い勝手が悪そうでちゃちですぐに壊れそうな見た目がかえってカッコ良く愛着をわかせる存在感がある。

 神話みたいに語られる物語はジャン・ピエール=メルヴィルやジョゼ・ジョバンニの頃のノワール全盛期を思わせもする、
 せりふのひとつひとつが余韻を残す味わいがあり、格言だけで構成されたドラマのように映るのは、ミステリマニアだと思われる字幕翻訳者の思い入れの強さがもたらしたものなのかも知れない。

 アメリカや日本のヤクザ映画との違いは、ギャングなのにオシャレで知的なイメージがせりふや身のこなし、服装などから感じとれることで、その分、暴力場面のえげつなさが際立って怖ろしく感じられる、という効果もある。

 『そして友よ、静かに死ね』というタイトルは全体のストーリーを一行で説明してしまっているものの、俳優たちひとりひとりの顔つきの良さ、いかにも危険なことに手を染めて、いろいろ気苦労の多い人生を過ごしてきた、と思わせるかたぎではない感じ、が素晴らしくて、物語に集中させる演出のテンポの良さもあり、あらが目立たないうちに上手に終了した、といった佳作だったように思われた。
 3時間近い大作にしてもいけるだろうに、B級映画っぽい上映時間の短さも良かった。
       MDB           公式サイト(日本)
映画の感想文日記-lyonnais01
 ギャング映画を集中して見ているときに起こりがちな現象として、ギャング(ヤクザ)こそがこの世で最も魅力的で美しい生き方をしているのではないのか、という錯覚に陥ることがある。愛と憎しみ、欲望や裏切り、悲しみなどが極端にあらわれるせいで、登場人物のすべてが神に愛された人々に見えてくる。メロドラマが基本に置かれているために引き起こされる現象だろう。
 映画産業に従事する人の多くはギャングと紙一重の生き方をしているので、仮託する想いもあるのだろう。
 ギャングこそが資本主義経済の代表選手の生き方だという説に従えば、考え事をめぐらせるには最適なジャンル映画がギャング映画なのかも知れない。
映画の感想文日記-lyonnais02
 ヤクザ映画は世界中に存在するが、近年の映画のイメージからすると、フレンチ・マフィア、ロシアン・マフィア、香港黒社会の3つが最も怖ろしいヤクザの三巨頭に見える。
 これほど出来の良いギャング映画を見たからには、『アウトレイジ・ビヨンド』が気になってくるが、最近の北野映画からは足が遠のいてしまって、前作の『アウトレイジ』が言われるほどには傑作だと思えなかったこともあり、ちょっと期待しながら来月あたりに見に行ってみようと思う。

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