2012年。アメリカ。"GONE".
エイトール・ダリア監督。アリソン・バーネット脚本。
アマンダ・セイフライドが誰からも信じてもらえずに、孤立無援で失踪した妹のゆくえを捜し出そうとするミステリー映画。
妹がいなくなった途端に、警察署に駆けつけて騒ぎ立てる様子からすでに観客はアマンダ・セイフライドを疑わしく思い始める。その後も彼女は人にうそをつくのに慣れている様子が示されて、ますます信用出来なくなる。
このヒロインの言っていることや行動をうかつに信じてはダメだという描写があまりに多すぎるので、これはやっぱりヒロインは実は本当のことを言っているのかも知れない、というサスペンス映画の定石に従った映画なのか、という印象が次第に強くなってきた。
面白くなりそうでそうならない、もどかしさの残る映画だったが、製作スタッフが目指そうとしたものは何となく想像できる。想像通りに作られていたならば隠れた傑作だという評判がなされただろうが、緊張感に欠けたエピソードがだらだらと連続するので、謎解きの面白さやスリラー映画の楽しみは脇に置いておいて、
この作品が撮影されたオレゴン州のポートランドという街の、住み心地の良さそうな雰囲気を楽しむに限る。風光明媚な森林公園もあり、緑が多く、全体にクリーンなイメージがある。環境にやさしい都市としては、世界第2位の評価を受けているほどに素晴らしい街のようだ。
サスペンス映画の舞台にはふさわしくない感じだが、警察署のピリピリしたムードの皆無な感じがポートランドの持ち味だったのかも知れない。
収入はそんなに多くなくてものんびり暮らしていけそうな土地柄もありそうだ、登場人物にそういうキャラクターが多かったせいもある。
配役が意外に豪華な印象があるのは、日本でよく知られた俳優が多く出演している局地的な感覚だろう。ジェニファー・カーペンターにキャサリン・メーニッヒ、ウェス・ベントリーにダニエル・サンジャタ、マイケル・パレなど映画よりもテレビで活躍している俳優が多く出演している。
ヒロインの同僚を演じるジェニファー・カーペンターの宝塚みたいな男っぽい女性のカッコよさ、
男っぽい女性の第一人者であったはずのキャサリン・メーニッヒがずいぶん老けたなあ、などと感慨にふけったりと、それなりに楽しみはある映画だった。
IMDB
公式サイト(日本)
大学の試験前で重要な時期のはずの妹モリー(エミリー・ウィッカーシャム)がある朝突然いなくなった。深夜のレストランで働いているジル(アマンダ・セイフライド)が帰宅してみると、明らかに不審なところがあった。
しかし、ジルは過去に精神科病棟に入れられていたことがあり、現在も向精神薬を服用しながら生活している。
1年前に何者かに拉致監禁されたが何とか逃亡してきたと言って警察に捜査してもらったが、彼女の妄想に過ぎないとして処理されてしまった経緯があるので、警察も彼女を素直に信じることはせず、またかという対応をする。
アマンダ・セイフライドのメンタルに問題をかかえた女性への役作りが見事で、さらに会う人ごとにうそをついてばかりいるので、見ていると本当にいらいらしてきて、ヒロインに感情移入する余地はゼロになり、結局はすべて彼女の妄想で実は妹を殺しているんじゃないのか、という気になってくる。
警察が追跡するのは危険人物だとみなされたヒロインのジルなので、そういう方向でサスペンスが盛り上がればもうちょっと面白い作品になりそうな予感はあった。
アマンダ・セイフライド本人にとってはキャリア上の汚点になってしまうのかも知れないが、今年も出演作が他に3本あり、出演予定の映画も10本くらいある忙しさで、この先数年間はアマンダ・セイフライドの映像を見続けることになりそうだ。アマンダ・セイフライド、いまだにつかみどころのない印象のある女優で、サスペンス映画のヒロインがふさわしい印象はあるが、本人は『レ・ミゼラブル』みたいな作品を好んでいるようだ。女子人気は高いが果たしてアメリカ本国でも男性ファンがいるのかどうか、日本だと栗山千明とか井上真央あたりに近いのかも知れない。
↧
★ 『ファインド・アウト』
↧