Quantcast
Channel: 映画の感想文日記
Viewing all articles
Browse latest Browse all 159

★ 『世界侵略:ロサンゼルス決戦』

$
0
0

2011年。アメリカ。"BATTLE: LOS ANGELS".
  ジョナサン・リーベスマン監督。
 アーロン・エッカートを初めて見たのは、『サスペクト・ゼロ』というスリラー映画でのFBI捜査官役だったが、そのときの印象は弱く、名前を記憶したのは、おそらくキャサリン・ゼタ=ジョーンズと共演した『幸せのレシピ』だった。
 その前に『サンキュー・スモーキング』でも認識はしていたが、他の強烈なキャラクターの俳優と比較すると劣勢で、キャメロン・ブライトのこましゃくれた演技が強く印象に残っている。

 その後は、数々の映画に出演している姿を見て、器用な俳優なのだな、と思っていたが、イメージとしては、がっしりした体格だが、演劇畑出身の繊細な心を持った青年という風に見えた。
 そのアーロン・エッカートが若い新兵たちの姿を見て、「こんちくしょう!青春か、まぶし過ぎるな。」とでも言いたげな表情を浮かべる中年の指揮官を演じている。
 初めて見たときからアーロン・エッカートはすでに分別のある大人だったが、まだ若さの名残りを残しており、揺れ動いていた。
 青年から中年へ、人はどのように移行するべきなのかをアーロン・エッカートのキャリアが示している。迷い人である観客の私たちは、この俳優をお手本にするべきかも知れない。

 この映画は、『テキサス・チェーンソー ビギニング』の監督が採用されて、ハズレ作品の少ないマイケル・ペーニャも出演している、という理由からちょっと期待していたが、
 最近のハリウッドの流行を取り入れたそつのない戦争映画で、顧客満足度は高そうだが、いまひとつな感じもつきまとう。つい最近、似たような題材の、『スカイラインー征服ー』というデタラメだが面白かった映画を見ていたためかも知れない。

 人類滅亡のバラードをただ呆然と眺めているだけの『スカイラインー征服-』は、ある種の哲学的な深みを偶然手に入れてしまったようにも見えたが、この『世界侵略』は手堅い作りだけに底も浅く感じてしまう。
 同じようなエイリアンを題材にした映画でも、『第9地区』には、想像力の躍動があった。
 つい、「想像力の貧困」という言葉が思い浮かんでしまう。
 映画の貧しさをあざ笑うことはたやすいが、そのときに人は自分自身の貧しさを忘れてしまいがちになる。『世界侵略:ロサンゼルス決戦』のダメさは、我々自身のダメさにも直結しているはずだろう。
 鏡を見るように『世界侵略:ロサンゼルス決戦』を見ると、適度に流行を取り入れて、市場経済から脱落しないように必死な映画産業と、それにしがみついて、似たような行動パターンにおちいっている自分の醜悪な姿勢が透けて見えてくるような心持ちがしたことだった。
    IMDb       公式サイト(日本)        
映画の感想文日記-battlela1
 いまだに、これといった当たり役には恵まれていないアーロン・エッカートは、流行のドキュメンタリー・スタイルを導入した画面でマイケル・ナンツ曹長を地味に演じるには最適なキャスティングだった。
 『ブラック・ダリア』で見せた好演から、このまま埋もれてしまうには惜しい人材なので、いつの日か、代表作となるべき作品にめぐり逢う日が訪れるのを気長に待っていよう。
映画の感想文日記-battlela2
 敵はエイリアンでも、物語はオールドスクールな古きよき時代の戦争映画のスタイルに忠実で、戦争映画ファンには、盛り上がるべき時には盛り上がる最高のひとときを与えてくれる作りになっている。
 ひとりひとりの兵士のキャラクターを印象づけるエピソードも的確に挿入されていて、全く退屈はしない。
映画の感想文日記-battlela3
 終わってみれば、いろいろ突っ込みどころの多い映画ではあったが、大予算のはずなのに、B級アクション映画に仕上げてしまったジョナサン・リーベスマンは良い仕事をした、と『テキサス・チェーンソー ビギニング』に引き続いて思った。
 マイケル・ペーニャのエピソードがありきたりで弱かったのが惜しまれる。

サンキュー・スモーキング (特別編) [DVD]/アーロン・エッカート,マリア・ベロ,キャメロン・ブライト
¥1,490
Amazon.co.jp
それぞれの空に [DVD]/ティム・ロビンス,レイチェル・マクアダムス,マイケル・ペーニャ
¥3,990
Amazon.co.jp

Viewing all articles
Browse latest Browse all 159

Trending Articles