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Channel: 映画の感想文日記
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★ 『エヴァンゲリヲン新劇場版:Q』

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2012年。
  廣野秀明総監督・脚本・原作。
 最初に上映されるスタジオジブリ製作の『巨神兵東京に現る 劇場版』という樋口真嗣監督による短編の実写映画がすばらしい。
 実写といってもスタジオ内に作ったミニチュアの東京のセットを破壊するだけなのだが、円谷プロダクションへのあこがれに満ちた映像に、林原めぐみの無感情なトーンのモノローグが重なり、世界終末の神話が淡々と、しかしパセティックに、文学的な修辞をほどこしてもったいぶった調子で語られるのを見ていると、語られる内容はともかく、
 よし、これだけでも1,800円の値打ちはあった、と思った。『破』と『Q』との間をつなぐ映画としても効果的な演出だった。
 これならアメリカやヨーロッパの若者をも煙に巻いて熱狂させ得るだけの品質は持っているのではないだろうか。久しぶりに海外に出しても恥ずかしくない、むしろ誇らしげに掲げても良いような日本映画が出現した、という気がする。ハッタリをかまして勝負に出る、という作戦は大成功に終わり、勝利を手にしたように見える。

 『巨神兵東京に現わる』に引き続いて始まる本編の映画は、すばらしいというほどではなかったものの、エヴァンゲリヲンを真剣に見たこともない者にしたら、わかりやすくはないが、難解というほどでもないこのくらいのバランスがちょうど良い感じだった。
 実際のところストーリーはよく理解できずに、ほとんど頭に入ってこなかったのだが、自閉的な少年が主人公の学園ラブロマンスを神話を語るように物語る、というスタイルが新鮮で面白い。
 上映時間は1時間30分以上あったものが、実際の体感時間は40分くらいの感じがあり、いきなり終わってしまって、ずいぶんあっという間だった、と思ったことも、いかに観客を映画に集中させる力があったかのあらわれだろう。

 ライアン・ジョンソン監督の『BRICK ブリック』みたいに、学園ものの青春映画をちょっと気取った語り口にするというアイデアがさえている。
 グレッグ・モットーラ監督の『アドベンチャーランドへようこそ』には劣るが、少なくともザック・スナイダー監督の『エンジェルウォーズ』よりはすぐれているのではないか、と思った。
      公式サイト(日本)
映画の感想文日記-evange01
 主人公の碇シンジが十四年の眠りから目覚めるところから物語が始まる。渚カヲルとのゲイ色が濃厚な出会いと別れのエピソードも何だったのかさっぱりわからなかったが、青春映画としてはありだろうと思った。
 アートフィルムっぽい感触がいやみではないのもすばらしい。難解なのではなく、単にカッコつけただけの難解っぽさに徹しているような演出のバランスがすぐれているのではないかと思った。
 ビルドゥングスロマン(教養物語)としてはぜんぜんダメなこんな話を真剣に受け止めようという気がないからなのだった。

 『破』で、効果的ではありながらも、白々しい気分になったりもした「今日の日はさようなら」や「翼をください」のような、『伊集院光の深夜の馬鹿力』か『喫茶ロック』のパクリかというような選曲は今回は影をひそめていた。かわりに意外と平凡な選曲になった。やはり変な曲のほうが面白かったかもしれない。エンディングの宇多田ヒカルの曲はまたもやすばらしい。

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