2013年。アメリカ。"The Hangover part Ⅲ".
トッド・フィリップス監督・製作・脚本。
完結編だとされる第三作目が終わろうとして、エンドクレジットの後に再び出現する悪夢の再来を見て、何だ!第四作目がすでに始まっているじゃないか、と一瞬思ったが、これは製作者がいよいよこの連作映画が終わってしまうことへの名残惜しさをごまかすための、照れ隠しのようなものなのだろう。
それほど熱中して見てきたシリーズでもないので、大して感慨もないだろうと思ったら、最後にザック・ガリフィアナキス演じるアランが、人生に立ち向かっていく決意を胸に秘めながら、お祭りはもう終わったのだということを知った男の微笑を浮かべていることに感銘を受けて、何かが終わるのはやはり寂しいものだとしんみりした気分になった。最後のおまけは多くの観客がそういう気分のまま帰ってもらっては困ると考えた製作者の精いっぱいのサービスでもある。
しかし、そういうサービスにこそ寂しさを感じたりすることもある。寂しさはともかく、いつの間にか大スターになっていたブラッドリー・クーパー以外のメンバーは、この先ちゃんと仕事があるのだろうか、と要らない心配さえしたくなるほどに地味な俳優ばかりが出演していた作品だった。
ジャスティン・バーサはこのシリーズに出演する前からコメディを中心に活躍していたし、ケン・チョンはアジア系の俳優の中で一定の地位を獲得したので心配は要らないにしても、歯科医のステュを演じていたエド・ヘルムスが今後このシリーズ以上の当たり役を手にするまでには相当の困難が想像される。
などと思っていたら、IMDBには今後の出演予定作品がぎっしり並んでいた。
このシリーズの最大のスターだったザック・ガリフィアナキスは『バベル』の監督が製作するコメディにエドワード・ノートンやエマ・ストーンなどと出演する予定のようだ。
もっとも先行き不透明で不安が大きいのはトッド・フィリップス監督に違いない。
素晴らしかった第一作目と並べると、第二作目の印象がほとんどないことに気づいた。ポール・ジアマッティの悪人役が悪人に見えなかったのが弱かったのだろうか。今回の悪役、ジョン・グッドマンも名前の通りに良い人にしか見えない。
しかし、今回の作品にある陰惨さは不思議な印象を与える。コメディなのに大勢人が死ぬ映画には、『21ジャンプストリート』もあったが、死に方にユーモアが欠けているような気がする。ケン・チョンが演じるミスター・チャウもギャングスターとしての出自を明らかに示す場面では情け容赦がない。
ケン・チョンがナイン・インチ・ネイルズの『ハート』を熱唱するおかしな場面もあった。あれはナイン・インチ・ネイルズのカバーではなく、それをカバーしたジョニー・キャッシュのカバーだったのかも知れない。
陰惨さとお笑いが同居している居心地の悪い感覚は1970年代のアクション映画っぽくもあり、面白かった。
IMDB
公式サイト(日本)
オープニングで『ショーシャンクの空に』や『アルカトラズからの脱出』などのへたくそなパロディっぽい場面からミスター・チャウの脱走シーンが始まり、
キリンの輸送シーンの黒い笑いへとつながるあたりから、この完結篇は当たり障りのある笑いにシフトした映画だということを見せていた。大勢の人が無造作に死んでいくのも、その流れの中では自然なことだとも思った。
途中で『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のメリッサ・マッカーシーが運命の女性として登場してきた場面では、ザック・ガリフィアナキスの画面を支配する力に対抗できるのはこの女性しかいないに違いない、とパズルのピースの全部がつながってくるような心地よい感覚に包まれた。
今後この映画の出演者やスタッフがジャド・アパトー一派と交流していく前ぶれになるのかも知れない。
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★ 『ハングオーバー!!! 最後の反省会』
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