2013年。アメリカ。"Olympus Has Fallen".
アントワーン・フークア監督・製作。
強さと繊細さをあわせ持った俳優として恋愛映画への出演も多い俳優、ジェラルド・バトラーとアーロン・エッカートが共演する。二人ともロマンティック・コメディへの出演もいくつかある。
似たようなキャラクターを演じることも多く共通点もある俳優が同じ映画に出演するとなると、危惧されることがある。これまでは単独で主演をしていた二人が同じ画面に映るとなると、どちらかが不利益を被るのではないのか、と思っていたら、アーロン・エッカートが被害を受けていたように見えた。
しかし、この映画はジェラルド・バトラーの製作会社も参加している企画なので、アーロン・エッカートは合衆国大統領を演じさせてもらえるからと、一歩身を引いてジェラルド・バトラーを輝かせる役割に徹したのだろう。
ジェラルド・バトラーにはヒット作は多いが、個人的には『Dear フランキー』のにせ船乗りのイメージであり続けている。あの作品で見せた誠実さや心優しさ、繊細さがジェラルド・バトラーという名前から付きまとって離れない。
作品自体の出来はいまいちだったが、『P.S.アイラヴユー』での暖かいまなざしも忘れがたい。いい人しか演じられないという弱点を克服しようとしたのか、いろいろな役柄に挑戦はしてきているが、これという決定的な役柄はまだないようだ。
今回の『24』を映画化するとすれば、こういうやり方になるのだろうと思われる作品に出た後でも、いまだに『Dear フランキー』の船乗りのままにいる。
この映画でもっとも驚いたのは、アーロン・エッカートが大統領を演じていたことだった。『エリン・ブロコビッチ』での、ジュリア・ロバーツの恋人役のヘルズ・エンジェルズみたいなバイカー役がついこの前だったような気がしていたが、あれからもう13年の歳月が流れていたのだった。
人は映画の中の俳優の姿を見て、自分の年齢を再確認するという役割も映画にはある。アーロン・エッカートは上手に年齢を重ねていっているが、果たして自分はどうなのか、と考えをめぐらせるきっかけにもなる。
ジョン・ミリアスの『若き勇者たち』みたいなとんでもない映画かと思ったら、反体制的な物語の『ザ・シューター/極大射程』を娯楽アクション映画に仕上げてみせたアントワーン・フークア監督は、バランス良く、『合衆国最後の日』と『24』と『ダイ・ハード』の第一作目とをミックスしたような面白さを目指していたようだった。
が、『24』の最初のシリーズのころの面白さには及ばなかったような気がした。『合衆国最後の日』には遠く及ばない。
IMDB
公式サイト(日本)
初めのエピソードで描かれるテロリストたちは計算されつくした行動と無敵の強さを誇っていたので、ジェラルド・バトラーが入り込むすきなどないように思われたのが、簡単に侵入できてあっけなかったが、その後もジェラルド・バトラーがあまりにも強すぎるので、ハラハラする場面がほとんどなかったのが、サスペンスの要素を減殺してしまったように映る。
ジャック・バウワーにはもうちょっと危なっかしくて強引な所があった。ジョン・マクレーンにあったユーモアの要素も少ないので、マイク・バニング(ジェラルド・バトラー)がもうひとつ魅力的に映らない。
娯楽アクション映画は物語を盛り上げるために悪役を強く魅力的に見せなければならない。結果的にアメリカ映画でおそらく初めて「カッコいい北朝鮮」が描かれた。
リック・ユーン演じる無敵のテロリストは健闘していたが、格闘シーンを演じるリック・ユーンの鍛えられた肉体の身のこなしを見ながら、これは須藤元気が演じるべきキャラクターではなかっただろうか、と思ったりした。
映画版の『仮面ライダー』で悪役を演じたり、スーツ姿でCMに出たりしている須藤元気がこのテロリスト役を演じていたら、よりアクションの切れ味が鋭くなり、憎らしさやわけのわからない魅力も増していたのではないか、という気がする。期せずしてユーモアが発生する余地もあっただろう。
『ジャッキー・ブラウン』での好演が印象深いロバート・フォスターが最盛期のアーネスト・ボーグナインみたいな存在感を発揮する悪役を演じていたのが面白かった。
チョイ役ながら映画のグレードアップの役割を果たしたアシュレイ・ジャッドやメリッサ・レオなども印象に残る。
今年は『ホワイトハウス・ダウン』というチャニング・テイタム主演の映画も公開されるし、ジョン・ミリアス監督の怪奇な傑作、『若き勇者たち』(1984年)のリメイク映画まで公開されるようだ。
ソビエト連邦を怖れるあまりに気が変になった国粋主義右翼が泣きながら作ったような『若き勇者たち』の変てこりんな魅力がどのように再現されているのか気になるが、『マイティ・ソー』のクリス・ヘムズワースが主演なので期待は出来ないような気がする。
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★ 『エンド・オブ・ホワイトハウス』
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