2013年。アメリカ。"V/H/S".
タイ・ウェスト、ラジオ・サイレンス、アダム・ウィンガード、その他監督。
ホラー映画を中心に活動する若者たち6組が集まり、創りあげたホラー映画。POVのホラーで、またか、という気分になりそうなところだったが、この作品に関しては世界各地の映画祭での前評判の高さがあった。
この若手の映画作家たちがコンセプチュアル・アートやフルクサス運動などをどれほど意識していたのかは不明だったが、
ホラーとPOVという流行の形式を利用した新しい芸術運動として、これまでのPOVホラー映画とは一線を画そうとする志の高さは伝わってくる。
『ブレアウィッチ・プロジェクト』をポップアートとして再構成した、という風に見ようとすれば、見えなくもない。
作品全体のうさん臭いチープなアートっぽさが素晴らしく、商品価値を高めている。
フィルム自体に宿る不吉なイメージの強さが、見てはならないものを見てしまっているのではないのか、という恐怖を募らせる。POVのホラーでこれほどに面白くて怖い作品は初めてのような気がする。サービス過剰なところもポップさにつながっている。
スナッフ・フィルムみたいな気持ち悪さもあり、うさん臭くて恐ろしくて面白いホラー映画の新しい傑作が誕生した、と言い得るのではないかと思ったりもした。
IMDB
公式サイト(日本)
ジャック・ターナー監督の『キャット・ピープル』(1942年)を現代風にアレンジしたようなスプラッターな猫女のエピソードを見ながら、こいつらは本気でホラー映画の歴史に革命を起こそうという野望を秘めているのか、と思ったが、『キャット・ピープル』より怖くないので、それは空回りの野望に過ぎなかったのかも知れない。
イーライ・ロスに見いだされて『キャビン・フィーバー2』を作ったタイ・ウェストの担当したパート、『セカンド・ハネムーン』の悪意に満ちたスプラッターなスナッフ・フィルムもどきの物語はさすがに強烈な印象を残した。タイ・ウェストはただ者ではない、近いうちにとんでもない傑作か駄作かを世に送り出すに違いない。
国際的に好セールスを記録したのか、すでに第2作目も完成しており、公開も決定しているようだ。
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