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Channel: 映画の感想文日記
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★ 『7 WISH/ セブン・ウィッシュ』

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2017年。アメリカ。"WISH UPON".

 ジョン・R・レオネッティ監督。

 怪奇小説の『猿の手』を基にしたティーンエイジ・ホラー映画で、七つの願いが叶うオルゴールを手に入れた少女が破滅していくさまを描く。一見して金がかかっている映画だとわかる豪華な作りが他の低予算ホラー映画とは一線を画している。

 エンドクレジットの丁寧で手間のかかった印象が好感度を高めている。しかし、ホラー映画としては全く怖くない、失笑するしかない恐怖シーンの数々、登場人物の性格が場面ごとに変化して同一人物と思えないという脚本の致命的な欠陥など傑作とは程遠い作品に見える。あまりに脚本がちぐはぐなので、これはわざと突っ込みどころを多くして大勢で盛り上がるパーティー向け映画にしようとした狙いなのかも知れない。

 ヒロインは2020年代のスターになることを期待されているジョーイ・キングで、母親の自殺という不幸な子供時代の悪夢に悩まされながら、貧しい家庭環境にめげずにけなげに自転車通学をするクレア(ジョーイ・キング)に街の人々が優しいまなざしで朝のあいさつをするシーンで映画は幕を開ける。それを見ている観客もクレアだけには幸せになってもらいたい、と思わさせられるような美しい場面だった。

 ところが、魔法のオルゴールを手に入れると突然クレアはSNSでの人気者になることだけを追求するインスタ映え系女子に成り下がり、周囲の人々が次々に死んでいることにも心動かされない。オープニングのかわいらしい少女はどこに行ってしまったのか、脚本がそうなっているから仕方がない。演じるジョーイ・キングも場面ごとのエモーションに忠実に前後のつながりは無視して戸惑いながらもやり遂げたという印象だった。ヒロインのクレアの学園内での位置もあいまいな所があり、いじめられっ子の割には学園を我が物顔で歩くお金持ち軍団の女王ダーシーに殴りかかったり、突然SNS界のスターになったりする。

 同一性が疑わしいのはクレアの父親(ライアン・フィリップ)もそうで、貧しいながらもプライドを持って廃品回収業を営んでいる良い父親だと思ったら、大金が手に入ったとたんになぜかジャズサックスの演奏をするイケメンの激渋オヤジになって身のこなしも気取り始める。

 クレアが小学生のころからあこがれる長身ハンサム金髪のポール(ミシェル・スラガート)もSNSにカッコつけた自撮り写真をアップする以外のキャラクター描写がないので、こんなナルシストのボンクラ男に恋するクレアは所詮はそういう女にすぎなかったのか、とすべてが疑わしく思われてくる。今どきの高校生の欲望に忠実に物語を作ったらこうならざるを得なかったということなのかも知れない。

 

 監督はジェームズ・ワンの映画のカメラマンとしてキャリアを重ねてきた人物で『バタフライ・エフェクト2』の監督もしており、全体に『バタフライ・エフェクト』と『ファイナル・デスティネーション』シリーズとをミックスしたような趣もあったが、死亡シーンのキレが悪く、ほとんどギャグコメディにしか見えないのは狙って外したのか、それとも能力の限界なのか、判然としない程度には学園ドラマの骨格はしっかりしており、清潔でていねいなデザインの好ましさもあって、ギャグ要素が強めな学園ホラー映画の新作としてそこそこの楽しさはあった。

      IMDb

 父親が拾った中国製のオルゴールに書かれた古代中国文字を読み解き、7つの願いが叶うことを知ったクレアは、彼女をいじめる学園の女王様気取りのダーシー(ジョゼフィン・ラングフォード)が腐ってしまいますように、と恐ろしい願いを口にする。すると、ダーシーは謎の皮膚病に感染し、皮膚がただれて入院してしまう。高校の学科に中国語があり、アメリカの高校生たちが熱心に中国語を学んでいる姿が意外だったが、実際はすでにこれが当たり前の風景なのかも知れない。

 クレアに救いの手を差し伸べる中国系のライアン(演じるのは韓国系の若手イケメン俳優キー・ホン・リー)は、願いには血の代償が支払われ、オルゴールの持ち主は最後に死ぬことを見抜いてクレアに恋するあまりに、自分の身を犠牲にしてでもクレアを救おうとするのだった。ライアンが自分に恋していることを知っているクレアはずる賢くそれを利用して自分だけは助かろうとたくらむ。

 願いごとの5つ目あたりから、タイムスリップが行われてパラレルワールドの要素が加わり、1度死んだ人間が生き返ったりして、何でもありの世界に突入する。

 ラストシーンはオルゴールを抱えたライアンがむごたらしく死んだクレアのよみがえりを実行しそうな続編を期待させる終わり方だった。

 

 

 


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