2015年。アメリカ。"THE DUFF",
アリ・サンデル監督。マックG製作。
主人公のビアンカ(メイ・ホイットマン)は、パーティー会場で幼なじみの体育会系美男子ウェスリー(ロビー・アメル)に「お前ってダフ(duff)だよな。」と言われる。「duffって何?」と尋ねると、「ダサい友だちのこと。どのグループにもいるイケてる友だちを引き立たせる添え物の友だちのことだよ、気づいてなかったの?」と言われてしまう。
ビアンカの親友であるキャシー(ビアンカ・サントス)もジェス(スカイラー・サミュエルズ)も学園内のスター的存在であり、ビアンカはそのことを誇りに思ってもいたのだったが、DUFFという新しい概念を導入してみると、すべてが違った風に見えてしまうことにビアンカは深く傷つくのだった。
ホラー映画マニアという悲しいオタク趣味の持ち主であるビアンカは、自分がDuffというカテゴリーに当てはまる存在なのだと自覚する。親友だと思っていたキャシーもジェスも自分の美を輝かせる道具としてビアンカを利用していたに過ぎないのではないか、と何もかもが疑わしく思われてきて、精神的孤立を経験したビアンカは、キャシーとジェスに絶交を宣言し、脱Duffを目指して見当はずれな努力を開始する。
Duffという新概念によってそれまでの人生すべてが違った風に見えてきて、自己同一性の危機に陥る主人公という設定が面白い。主役のメイ・ホイットマンはお笑い系女優の期待の星らしいが、今年30歳になるとは思えない童顔と子ども体型を生かして熱演している。新人俳優のショーケースみたいな学園コメディだったが、ヒロインの母親役で今年のオスカー助演女優賞受賞のアリソン・ジャネイ、ヒロインに有益な助言を与える教師役でケン・チョンが出演している。SNS時代を生きる現代アメリカの高校生(5つか6種類くらいのSNSを駆使して生き延びる道を模索し続ける)の苦難に満ちた生活がうかがい知れる苦い味の青春ラブコメディの佳作。全米初登場第5位と意外にヒットしている。前評判の高さからからリンジー・ローハン主演の『ミーン・ガールズ』みたいな目の覚めるスマッシュヒットを期待したら、学園コメディの不調さを反映したそこそこに良く出来た作品だったが、近年では上質な部類に入ると思われる。
ヒロイン役のメイ・ホイットマンと親友役のビアンカ・サントスとスカイラー・サミュエルズの全員が30歳前後で高校生役にしては老け込んでいるが、気にしてはなるまい。Duffという概念を吹き飛ばすほどの3人の友情の美しさが物語の主題のひとつとなっている。
ビアンカに認識論的切断をもたらした幼なじみの筋肉少年ウェスリーは、理科と数学の成績不振で名門大学へのフットボール推薦が受けられるかどうか難しいラインにいた。それに目を付けたビアンカは彼にイケてる女子になるためのアドバイザーを依頼する。互いを異性と意識しないまま行動をともにするうちに二人の間に不思議な感情が発生していることに気づいてしまうビアンカとウェスリーだった。
フットボール部のスターであるウェスリーを自分の美しさを引き立たせるお飾りにしたい学園の女王マディソン(ベラ・ソーン)がビアンカに陰険な嫌がらせを続ける。クライマックスのホームカミング(秋に行われる高校のイベント)での大逆転でマディソンの女王の座がもろくも崩れ去ってしまうさまが笑いどころになっている。ベラ・ソーンとメイ・ホイットマンは9歳の年齢差がある。
ビアンカ役のオーディションに参加して落選したベラ・ソーンだったが、プロデューサーが彼女を気に入って原作にない役柄を脚本に加筆して参加させた、といういきさつがある。まだ21歳ながら映画プロデューサー、歌手としても活躍するベラ・ソーンは今後が楽しみな人物である。
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