2011年。アメリカ。"Mission Impossible Ghost Protocol".
ブラッド・バード監督。
ジェレミー・レナーとサイモン・ペッグというある意味では世界一豪華な組み合わせの共演が実現したからには、見逃すわけにはいかない。
『イングロリアス・バスターズ』の前半のチョイ役ながら、若い頃のアンヌ・ヴィアゼムスキーに似ているなと思って気になっていると、ゴダールおたくのタランティーノもやはりそう思っていたようで、しつこくカメラが彼女のアップを撮り続けることで、記憶に残るチョイ役となったレア・セドゥーも、ダイヤモンドが大好きな女殺し屋というキャラクターで登場する。
『歓びを歌にのせて』や、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』などでなじみ深いミカエル・ニクヴィストも悪役で国際舞台に登場した。
『プレシャス』では、こんなに聡明で美しい女優がまだいたのか、と感心したポーラ・パットンもチームの一員として重要な役どころで出演している。
何とすばらしいキャスティングだろう、これは映画おたくの映画おたくによる映画おたくのためのキャスティング以外の何ものでもない。
これも、老いの気配を隠そうともせずに、おじさんからおじいさんになる過程の途中にあることを前面に見せて奮闘するトム・クルーズの器の大きさのあらわれだろう。
ディズニー・ピクサーのアニメ監督が実写映画を初めて演出する、という点にも興味があったが、やはり、変な映画になっていて、前半でポーラ・パットンが事の次第をトム・クルーズに報告する場面でも、突然みょうに情緒的な回想シーンになって、物語の流れをぶつ切りにする、といった普通の映画監督ならもっと自然に見せるはずの編集が、違和感を残したままの状態で放置されている。
これはマンガだったら自然な流れだが、実写の映画だと不思議な感じになる。全体にこういう演出はなされていて、もともとマンガっぽかった『ミッション:インポッシブル』シリーズだったが、よりマンガっぽくなった。
登場するキャラクターもマンガの登場人物みたいな変な人ばかりで、悪く言えば型にはまりすぎている。
しかし、これは製作者の狙いなのは一目瞭然で、楽しさはこれまでで最高だった。
この映画は、『ミッション:インポッシブル』というステージの座長を務めるトム・クルーズが、世界中から面白い役者を集めて行った興業で、それぞれの俳優にふさわしい見せ場が用意されていて、歌舞伎の世界に近づいたような印象がある。
IMDb
公式サイト(日本)
エドガー・ライト・ギャングの一員でありながら、今やいろんなジャンルの映画に引っ張りだこの人気俳優となったサイモン・ペッグだが、この映画でも出てくるたびに観客を笑わせることをおこたらなかった。
『宇宙人ポール』を早く見てみたい。
よく見ると、アンヌ・ヴィアゼムスキーにはぜんぜん似ていないが、何か気になるサムシングを持っているレア・セドゥーはフランス国内では若い世代に大人気の女優らしい。
フランスを代表する映画会社の重役ファミリーのお嬢さまだが、大富豪らしさを感じさせない、ちょっとすっとぼけた雰囲気が持ち味だろうか。フランス版のマンディ・ムーアといった印象もある。
トム・クルーズには負けるものの、運動神経の良さをさりげなく披露してアクション俳優としてのステップを急速度で駆け上がっているジェレミー・レナーは、やはりジェームズ・キャグニーにますます似てきたような気がする。
ここではユーモアも軽妙な演技も、シリアスな演技も出来ることをアピールして、活躍の場を広くすることに成功していた。
コメディ映画としても良く出来ているので、来週公開の『ジョニー・イングリッシュ 気休めの報酬』は果たしてこの映画のギャグに勝てるのか、心配になってきた。
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